NPSとは — 計算は簡単、解釈は難しい指標
NPS(ネット・プロモーター・スコア)とは、「この商品を友人や同僚にすすめる可能性はどのくらいですか」を0〜10の11段階で聞き、9〜10と答えた人の割合から0〜6と答えた人の割合を引いた数値です。−100〜+100の範囲を取ります。
最終更新: 2026-07-26
この記事の要点
- 計算式は「推奨者% − 批判者%」。7〜8の中立者は分子に入らない
- 日本のスコアは構造的に低く出る。海外の平均値と直接比べてはいけない
- 価値があるのは絶対値ではなく、同じ聞き方での時系列変化と層間の差
計算方法
| 回答 | 区分 | 扱い |
|---|---|---|
| 9〜10 | 推奨者(プロモーター) | プラスに数える |
| 7〜8 | 中立者(パッシブ) | 数えない(分母には入る) |
| 0〜6 | 批判者(デトラクター) | マイナスに数える |
例:回答者200人のうち、推奨者50人(25%)、中立者80人(40%)、批判者70人(35%)なら、NPS = 25 − 35 = −10 です。中立者が40%もいても、スコアには一切反映されません。
日本のNPSが低く出る理由
国内の調査実務では、同じ水準の満足度でもNPSが低め(多くの業種でマイナス)に出やすいことが経験的に知られています。理由は商品の質ではなく、回答の癖にあると考えられます。
- 中庸を好む回答傾向。満足していても「まあ7か8だろう」と付ける人が多い
- 「人にすすめる」という行為自体への心理的な抵抗。満足と推奨が直結しない
- 10点を「完璧」と解釈し、不満がなくても付けない
したがって「自社のNPSは−10だから世界的に見て悪い」という読み方は成立しません。海外の公表値は、回答の癖も設問文も回答者条件も違う数字です。比べてよいのは、同じ設問文・同じ回答者条件で取った自社の過去スコアと、同一調査内の他ブランドのスコアだけです。
改善に繋げる使い方
- 1推奨度の直後に「その点数を付けた理由」を自由回答で聞く。NPSの実用価値の大半はここにあります
- 2自由回答を分類(コード化)して、批判者に多い理由・推奨者に多い理由を並べる
- 3推奨度と各項目の満足度をクロスし、どの項目が推奨度に効いているかを見る(推奨度ドライバー分析)
- 4「満足度は高いのに推奨度に効いていない項目」を見つける。ここは投資を減らせる領域です
スコアを毎月見るだけの運用は、ほぼ確実に形骸化します。NPSは「点数」ではなく「点数の理由を聞き出す入口」として設計してください。
満足度調査との使い分け
| NPS | 満足度(5段階) | |
|---|---|---|
| 聞くこと | 人にすすめるか | 満足しているか |
| 得意なこと | 熱量の高さを捉える/時系列で追う | 水準を測る/項目別の弱点を特定する |
| 苦手なこと | 小さな改善が反映されない | 全員が「満足」に寄って差が出にくい |
| 向く場面 | 継続利用のあるサービス | 単発の購買・体験 |
どちらが優れているかではなく、継続利用が価値の源泉であるサービスならNPS、単発の体験品質を測るなら満足度、と場面で選んでください。両方を同じ調査に入れても構いません。
よくある質問
NPSの計算方法を教えてください。
0〜10の11段階で推奨度を聞き、9〜10と答えた人の割合(推奨者%)から0〜6と答えた人の割合(批判者%)を引きます。7〜8の中立者は分子に入りませんが、分母には含まれます。結果は−100〜+100の範囲を取ります。
NPSの日本平均はどれくらいですか?
業種によりますが、国内では0を下回ることが珍しくありません。中庸を好む回答傾向と「人にすすめる」ことへの心理的抵抗が影響していると考えられます。海外の公表値は設問文も回答者条件も異なるため直接比較できません。自社の時系列と、同一調査内の他ブランドとだけ比べてください。
NPSに必要なサンプルサイズは?
NPSは2つの比率の差であるため、単一比率より誤差が大きくなります。全体で±5ポイント程度の精度なら400以上、層別に比較するなら各層200以上が目安です。n=100では月次で±10ポイント程度は自然に揺れます。
NPSが改善しているのに売上が伸びないのはなぜですか?
NPSは既存顧客の熱量を測る指標で、認知・配荷・価格競争力といった新規獲得側の要因を含みません。また中立者の改善がスコアに反映されないため、実際の顧客体験の変化とスコアの動きがずれることもあります。売上と繋げるなら、推奨度と実購買データを紐づけて検証してください。
NPSと満足度はどちらを使うべきですか?
継続利用が価値の源泉であるサービスならNPS、単発の購買や体験の品質を測るなら満足度が適しています。両方を同じ調査に入れることも可能です。ただしNPSを使う場合は、点数の理由を自由回答で必ず聞いてください。理由なしのスコアは運用が形骸化します。
この記事について
書いているのは、データ集計・分析・レポート作成を専門に1,000件以上の案件を手がけてきた実務者です。内容は、分析ツールを実装する際に固定した計算仕様(式・丸め・除外規則・境界の扱い)を土台にしています。掲載している数値例は、合計・内訳・人数が整合するように作ってあり、読者が手元で検算できます。その手法で答えられない問いや、読み違えやすい点も本文中で明示する方針です。
公開: 2026-07-26 / 最終更新: 2026-07-26 / 執筆・監修: マーケティングアシスタント
