統計の土台

サンプルサイズの決め方 — なぜ「400」がよく使われるのか

サンプルサイズとは、調査で回答を集める人数のことです。必要な人数は「どれくらいの誤差まで許せるか」で決まり、母集団の大きさにはほとんど左右されません。

最終更新: 2026-07-26

この記事の要点

  • 全体の数字を±5ポイントの精度で見たいなら約400、±3ポイントなら約1,070が目安
  • 必要数は母集団の大きさでほぼ変わらない。1万人の市場でも1億人の市場でも約400
  • 本当に効くのは「全体で何人か」ではなく「一番小さく割る層で何人残るか」

なぜ400なのか

調査で得た比率(例:「購入意向あり 45%」)には、必ず誤差の幅があります。信頼度95%で、比率が50%付近のとき、誤差の幅はおおよそ次の通りです。

標本誤差の早見表(単純無作為抽出・有限母集団補正なし・比率50%・信頼度95%)
回収数 n誤差の幅(±ポイント)実務での意味
100±9.8大きな傾向しか言えない
200±6.9全体像の把握には足りる
400±4.9「約5ポイントの精度」。最も使われる標準
600±4.0層別に見たいときの現実的な線
1,000±3.1経年比較・指標のモニタリング向き
1,070±3.0±3ポイントを確保したいときの目安
2,400±2.0ここから先は費用対効果が急落する

400という数字は「誤差±5ポイントがちょうど収まる最小の丸い数」です。統計的な魔法ではなく、精度と費用の折り合いとして業界が採用してきた慣習です。逆に言えば、±10ポイントで判断できる問いなら100人で足ります。

母集団の大きさは(ほとんど)関係ない

「対象が100万人もいるから、たくさん集めないと」という直感は誤りです。必要な回収数は母集団の大きさにほぼ依存しません。1万人の市場でも1億人の市場でも、±5ポイントを狙うなら約400です。

例外は、母集団が回収数に比べて小さいときです。社員500人へのアンケートで200人集めれば、母集団の4割を押さえたことになり、誤差は理論値より小さくなります(有限母集団修正)。社内調査・会員調査など母集団が数百〜数千のときだけ、この修正を考えてください。

本当に効くのは「割ったあとの人数」

実務でサンプルサイズを決めるとき、全体のnより重要なのは「分析で一番小さく割る層に何人残るか」です。全体400人でも、性別×年代で8分割すれば1セル50人、そこから購入者に絞れば20人台になります。

層あたりの人数できること
n=30未満参考値。%を根拠に判断しない
n=30〜99傾向として読む。10ポイント程度の差では言い切らない
n=100層間の比較に耐える下限。実務の推奨ライン
n=200層の中をさらに割って見られる

したがって、設計の手順は「全体で何人集めるか」ではなく「報告書で比較したい層をすべて書き出し → 各層に100人ずつ確保するには全体で何人必要か」の順です。この順で考えると、必要数が2,000人になることも、逆に300人で足りることも分かります。

2つの層の差を検出したいとき

「A案とB案で購入意向に差があるか」を確かめたい場合、必要数は“見つけたい差の大きさ”で決まります。小さな差を確実に捉えたいほど、必要数は急激に増えます。

2群の比率の差を検出するのに必要な各群の人数(基準となる群の比率40%・両側5%・検出力80%・両群同数・正規近似)
見つけたい差各群に必要な人数合計
20ポイント約100約200
15ポイント約175約350
10ポイント約390約780
5ポイント約1,540約3,080

5ポイントの差を統計的に確かめるには両群で3,000人規模が要る、という事実は、調査設計の会話を現実的にします。予算が合わないなら、「5ポイントの差では意思決定しない」と先に決めるほうが健全です。

よくある質問

アンケートのサンプルサイズはどうやって決めますか?

許容できる誤差から逆算します。信頼度95%で誤差±5ポイントなら約400、±3ポイントなら約1,070が目安です。ただし実務では、報告書で比較したい層をすべて書き出し、各層に100人ずつ確保できる全体数を求める手順のほうが確実です。

母集団が大きいと必要なサンプルサイズも増えますか?

ほとんど増えません。必要数は母集団の大きさにほぼ依存せず、1万人の市場でも1億人の市場でも±5ポイントなら約400です。例外は母集団が数百〜数千と小さい場合で、このときは有限母集団修正により必要数が減ります。

n=30という基準は何を意味しますか?

統計的な絶対の境界ではなく、実務上の「これ未満は%を根拠にしない」という約束です。n=30では1人が3.3ポイントを動かすため、層間の差が個人の揺れに埋もれます。比較に使うならn=100を目安にしてください。

回収数を増やせば必ず精度は上がりますか?

誤差は回収数の平方根に反比例するため、精度を2倍にするには回収数を4倍にする必要があります。n=400からn=1,600に増やしても誤差は±4.9から±2.5に縮むだけです。増やすより、対象者の条件を正しく設定するほうが結果への影響は大きくなります。

サンプルサイズが足りないまま集計してしまった場合はどうすればいいですか?

小さいセルを参考値と明示し、%ではなく実数(何人中何人)で報告してください。そのうえで、層を統合して(例: 20代と30代をまとめる)nを確保し直すのが現実的です。足りないことを黙って%だけ出すのが最も危険です。

この手法を、実際のデータで試す

検定・サンプルサイズ電卓

許容誤差から必要数を、2群の差から検出に必要な人数を、その場で計算できます。

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この記事について

書いているのは、データ集計・分析・レポート作成を専門に1,000件以上の案件を手がけてきた実務者です。内容は、分析ツールを実装する際に固定した計算仕様(式・丸め・除外規則・境界の扱い)を土台にしています。掲載している数値例は、合計・内訳・人数が整合するように作ってあり、読者が手元で検算できます。その手法で答えられない問いや、読み違えやすい点も本文中で明示する方針です。

公開: 2026-07-26 / 最終更新: 2026-07-26 / 執筆・監修: マーケティングアシスタント

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