コンジョイント分析とは — 「どの仕様なら選ばれるか」を数字にする
コンジョイント分析とは、価格・容量・機能などを組み合わせた複数の商品案を提示して選ばせ、その選択結果から「どの要素がどれだけ選好に効いているか」を分解して数値化する手法です。
最終更新: 2026-07-26
この記事の要点
- 個々の要素を単独で聞かず、束(コンジョイント)で提示して選ばせるのが要点
- 属性は4〜6個、水準は各2〜5個に収める。増やすほど必要な回答数が跳ね上がる
- 得られるのは相対的な選好の重み。実売シェアの予測値ではない
なぜ「束」で聞くのか
「価格は安いほうがいいですか」と聞けば全員が「はい」と答えます。「容量は多いほうがいいですか」も同じです。単独で聞く限り、すべての要素が「あったほうがいい」になり、優先順位が出ません。
コンジョイント分析は、価格・容量・機能をまとめた商品案を2〜3案並べて「この中ならどれを買いますか」と聞きます。回答者は必ずどこかを諦めるため、その諦め方から「価格を100円上げてでも欲しい機能はどれか」という交換比率が取り出せます。実際の購買が持つトレードオフを、調査の中に再現する手法です。
属性と水準の設計
属性=比較する軸(価格・容量・成分…)、水準=その軸の選択肢(298円・398円・498円…)です。ここの設計が分析の質をほぼ決めます。
| 項目 | 推奨 | 理由 |
|---|---|---|
| 属性の数 | 4〜6 | 7を超えると回答者がカード全体を読まなくなる |
| 水準の数 | 各2〜5 | 水準が多い属性ほど重要度が高く出る偏りが生じる |
| 1画面の提示案数 | 2〜3案+「どれも買わない」 | 「買わない」を入れないと選好が過大評価される |
| 1人あたりの設問数 | 8〜12セット | 12を超えると後半の回答品質が落ちる |
結果の読み方
① 部分効用値
各水準が選好にどれだけ寄与したかの値です。同じ属性の中でのみ比較できます。「容量500ml:+0.42/容量350ml:−0.42」なら、500mlは350mlより選ばれやすい、という意味です。属性をまたいで「+0.42 と +0.31 だからこちらが上」とは読めません。
② 属性重要度
属性ごとに「最も高い部分効用値 − 最も低い部分効用値」を取り、全属性の合計で割って%にしたものです。これは属性をまたいで比較できます。
| 属性 | 重要度 | 読み方 |
|---|---|---|
| 価格 | 38% | 選好の4割弱を価格が握っている |
| 成分 | 27% | 価格に次ぐ武器。訴求の主役候補 |
| 容量 | 18% | 差別化には弱い |
| パッケージ | 10% | 選ばれ方にはほぼ効かない |
| ブランド | 7% | この層では無名でも戦える |
③ シェアシミュレーション
自社案と競合案を仮想的に並べ、「この市場ならどれが何%選ばれるか」を計算する使い方です。価格を変えたときのシェアの動きを見られるのが最大の利点で、実務ではここが本番になります。
コンジョイント分析で分からないこと
- シミュレーションの数字は実売シェアではありません。提示された案の中での相対的な選ばれやすさであり、認知率・配荷・広告量は一切入っていません
- カードに載せていない要素(棚での見え方、口コミ、店員の推奨)は結果に反映されません
- 水準の範囲外は予測できません。298〜498円で調査した結果から、980円のときのシェアは出せません
- 回答者は「買うつもりで選ぶ」だけで、実際にレジに並ぶわけではありません。新奇性のある案は高めに出ます
MaxDiff・PSMとの使い分け
| 手法 | 答えられる問い | 使う段階 |
|---|---|---|
| MaxDiff | どの訴求点が効くか(項目の優先順位) | コンセプト検討の前半 |
| コンジョイント | どの仕様の組み合わせが選ばれるか | 仕様と価格を同時に決めるとき |
| PSM分析 | いくらなら受け入れられるか(価格の範囲) | 価格の当たりをつけるとき |
よくある質問
コンジョイント分析の属性は何個まで設定できますか?
4〜6個が実務の推奨です。7個を超えると回答者がカード全体を読まずに1つの属性だけで決め始め、他の属性の効果が正しく推定できなくなります。属性が多い場合は、事前に重要そうな軸をMaxDiffなどで絞り込んでください。
部分効用値と属性重要度はどう違いますか?
部分効用値は各水準の寄与度で、同じ属性の中でのみ比較できます。属性重要度は「その属性内の最大と最小の差」を全属性合計で割った%で、属性をまたいで比較できます。報告書で「価格が最も効いている」と言うときは重要度を使います。
コンジョイント分析のサンプルサイズはどれくらい必要ですか?
全体の効用値を安定させるだけなら200〜300で足ります。層別に効用値を見る場合は各層150〜200が目安です。属性・水準が多いほど1人あたりの設問数が増えるため、回答者の負担と回収数のバランスを設計段階で決めてください。
シェアシミュレーションの数字は実際のシェアになりますか?
なりません。提示された案の中での相対的な選ばれやすさであり、認知率・配荷率・広告投下量は含まれていません。実務では絶対値ではなく、「価格を100円上げるとシェアが何ポイント落ちるか」という差分の読み取りに使ってください。
「どれも買わない」の選択肢は必要ですか?
必要です。入れないと、回答者は必ずどれかを選ぶため、市場全体の需要が過大に見積もられます。「どれも買わない」を入れることで、価格が上がったときに市場から抜けていく動きを捉えられます。
この記事について
書いているのは、データ集計・分析・レポート作成を専門に1,000件以上の案件を手がけてきた実務者です。内容は、分析ツールを実装する際に固定した計算仕様(式・丸め・除外規則・境界の扱い)を土台にしています。掲載している数値例は、合計・内訳・人数が整合するように作ってあり、読者が手元で検算できます。その手法で答えられない問いや、読み違えやすい点も本文中で明示する方針です。
公開: 2026-07-26 / 最終更新: 2026-07-26 / 執筆・監修: マーケティングアシスタント
