PSM分析とは — 4つの質問で「受け入れられる価格帯」を出す方法
PSM分析(価格感度測定法)とは、1人の回答者に価格についての4つの質問をし、その回答を価格軸上で累積して4本の曲線を描き、曲線の交点から「受け入れられる価格の範囲」を読み取る手法です。
最終更新: 2026-07-26
この記事の要点
- 聞くのは4問だけ。集計は「その価格以下(以上)と答えた人の累積%」を取るだけで、特別なソフトはいらない
- 得られるのは価格の“範囲”であって、売れる数量や売上ではない
- 既に相場観のあるカテゴリでしか機能しない。世の中にない新カテゴリでは回答が荒れる
何を聞くのか — 4つの質問
商品の説明(写真・内容量・使い方まで、実際の店頭で得られる情報と同じ量)を提示したうえで、同じ人に次の4つを金額で答えてもらいます。順番は下の通りが標準です。
| # | 質問(回答者に見せる文言の例) | この質問が拾っている心理 |
|---|---|---|
| Q1 | いくらから「安すぎて、品質が不安」だと感じますか? | 下限。ここを割ると「安かろう悪かろう」に見える |
| Q2 | いくらから「安い/お買い得」だと感じますか? | お得に見え始める線 |
| Q3 | いくらから「高い」と感じますか? | 割高に見え始める線 |
| Q4 | いくらから「高すぎて、買わない」と感じますか? | 上限。ここを超えると検討から外れる |
集計のしかた — 4本の曲線を描く
横軸に価格、縦軸に累積比率を取り、次の4本を描きます。「安い」系は価格が上がるほど減る右下がり、「高い」系は価格が上がるほど増える右上がりになります。
- 1安すぎる曲線:その価格を「安すぎる」と答えた人の累積(右下がり)
- 2安い曲線:その価格を「安い」と答えた人の累積(右下がり)
- 3高い曲線:その価格を「高い」と答えた人の累積(右上がり)
- 4高すぎる曲線:その価格を「高すぎる」と答えた人の累積(右上がり)
累積の刻み幅(10円刻みか100円刻みか)で交点は動きます。想定価格帯の1〜2%程度を刻み幅にするのが実務的です。刻みが粗いと交点が階段状にジャンプし、細かすぎると回答のばらつきがそのまま線のギザギザになります。
4つの交点の読み方
| 交点 | 交わる2本 | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 下限価格 | 安すぎる × 高い | これより下げると、安さより先に品質不安が立つ。値下げの床 |
| 上限価格 | 高すぎる × 安い | これより上げると、検討リストから落ちる人が増える。値上げの天井 |
| 最適価格 | 安すぎる × 高すぎる | 「安すぎて不安」と「高すぎて買わない」が釣り合う点。抵抗が最も小さい価格 |
| 妥協価格 | 安い × 高い | 「安い」とも「高い」とも思われにくい、いわば相場に見える価格 |
下限価格から上限価格までが「受容価格帯」です。実務では、この帯の中のどこに置くかを、原価・競合の実売価格・ブランドの立ち位置で決めます。最適価格は「最も売れる価格」ではなく「最も抵抗が少ない価格」である点に注意してください。
必要な回収数
| 見たい単位 | 推奨回収数 | 根拠 |
|---|---|---|
| 全体で1本の帯を出す | n=100以上 | 交点が刻み1つ分でぶれなくなる目安 |
| セグメント別に帯を出す | 各セグメント n=100 | 交点は分布の裾で決まるため、n=30では動きすぎる |
| 価格改定の意思決定に使う | n=200〜300 | 矛盾回答の除外で1〜2割減ることを見込む |
PSMの交点は平均値ではなく分布の交わりで決まるため、平均値を見る調査より多めの回収数が要ります。n=50で出した帯は、同じ条件でもう一度調査すると別の数字になると考えてください。
PSM分析で分からないこと(正直な限界)
- 売れる数量・売上は分からない。「その価格なら何個売れるか」に答えるには、購入意向を価格ごとに聞く別の手法(Gabor-Granger法など)が必要です
- 回答は「言ったこと」であって、財布を開いた行動ではない。実際の支払意思より安めに出る傾向があります
- 相場観のないカテゴリでは機能しない。世の中に前例のない商品では、回答者が基準を持たないため4本の線が交わらない、あるいは異常に広い帯になります
- 競合価格の情報が入っていない。市場の実売価格が受容帯のどこにあるかは、別途データを重ねて確かめる必要があります
PSMの後に何をするか
受容価格帯が出たら、次の問いは「その帯の中に、競合は何社・どの価格で並んでいるか」です。帯の中にすでに競合がひしめいていれば、価格では勝負がつきません。逆に帯の中に価格の空白があれば、そこが狙い目になります。
また、数量まで踏み込む必要があるなら、価格ごとの購入意向を段階的に聞く価格反応分析を重ねます。PSMは「置いていい範囲」を、価格反応分析は「置いたときの反応」を教えてくれます。
よくある質問
PSM分析のサンプルサイズはどれくらい必要ですか?
全体で1本の受容価格帯を出すなら100以上、セグメント別に見るならセグメントごとに100を目安にしてください。矛盾回答の除外で1〜2割減ることを見込み、価格改定の意思決定に使うなら200〜300を回収するのが実務的です。
4本の曲線が交わらない場合はどうすればいいですか?
回答者がそのカテゴリの相場を知らない可能性が高いです。商品説明の情報量(内容量・使用シーン・比較対象)を増やすか、対象を「そのカテゴリの購入経験者」に絞って調査し直してください。交わらないまま無理に読むと、根拠のない価格が独り歩きします。
最適価格をそのまま販売価格にしてよいですか?
おすすめしません。最適価格は「価格への抵抗が最も小さい点」であって、利益が最大になる点ではありません。原価・競合の実売価格・ブランドの立ち位置を重ねたうえで、受容価格帯の中のどこに置くかを決めてください。
PSM分析は無料でできますか?
計算自体は「その価格以下(以上)と答えた人の累積比率」を取るだけなので、表計算ソフトでも可能です。本サイトの分析ツールでは、4問の回答データを貼り付けると4本の曲線・4つの交点・読み解き文まで無料で出力できます。
PSM分析と価格反応分析(Gabor-Granger法)はどう使い分けますか?
PSMは「いくらなら受け入れられるか」の範囲を出す手法、価格反応分析は「その価格でどれくらい買うか」の反応を出す手法です。価格帯の当たりをつける段階ではPSM、候補価格が絞れて数量を見積もる段階では価格反応分析、という順で使います。
この記事について
書いているのは、データ集計・分析・レポート作成を専門に1,000件以上の案件を手がけてきた実務者です。内容は、分析ツールを実装する際に固定した計算仕様(式・丸め・除外規則・境界の扱い)を土台にしています。掲載している数値例は、合計・内訳・人数が整合するように作ってあり、読者が手元で検算できます。その手法で答えられない問いや、読み違えやすい点も本文中で明示する方針です。
公開: 2026-07-26 / 最終更新: 2026-07-26 / 執筆・監修: マーケティングアシスタント
